脱ポチゲー!バトルゲームでユーザーを惹きつけるためのシナリオ展開
スマートフォンゲーム、ブラウザゲームで大半を占めるFree to Playモデルのバトルゲーム。
近頃はかなり凝ったシナリオを実装しているゲームが目立つようになりました。
数年前まではシナリオと呼べるようなストーリー性のあるバトルゲームはほぼ存在していませんでした。
「次に進もう!」だけが延々と表示される、いわゆるポチゲー仕様が乱立している状態でしたが、スマートフォンのネイティブアプリがメインストリームになってきたことで、実装できる容量も増え、本格的なシナリオを採り入れやすくなったのでしょう。
さて、今回はそんなネイティブアプリにおけるバトルシーンのシナリオ展開について考えていこうと思います。
2つのシナリオタイプ
ソーシャルバトルゲームにおいて、シナリオの種類は以下の2つに大別することができます。
- バトル前後に挿入されるシナリオ
- キャラクターに紐づくシナリオ
1つめはメインシナリオ・本編を含めて、ゲームのメインコンテンツの前後に挿入されるシナリオです。
ここでは連続性のある物語が語られることが多く、コンシュマーゲームにおけるRPGのシナリオに近しいイメージのストーリーが展開されます。
2つめはキャラクターにフィーチャーしたシナリオです。
F2Pゲームの場合、キャラクターのガチャ課金がゲーム制作会社の収入源となるため、キャラクターにまつわるシナリオは非常に重要なファクターといえます。
登場キャラクターはゲームの運営日数に比例して次々と追加され、長寿ゲームでは千人を越えることも珍しくありません。
キャラクターにフィーチャーしたシナリオでは、人物の過去にまつわる話や、メインシナリオでは描かれなかったキャラクターの意外な一面が垣間見えるサイドストーリーだったりと、キャラクターの魅力をより一層深掘りするためのストーリーが展開されます。
今回は1つめの、「メインコンテンツ=バトル」の前後に挿入されるシナリオをメインに取り上げます。
バトルシナリオの脱ワンパターン
何度も戦闘を繰り返すバトルゲームでは、シナリオがワンパターンになってしまいがちです。
ユーザーを飽きさせない展開には少々工夫が必要です。
安易に「戦うぞ!」を使わない
私がゲームシナリオを執筆をする上で気をつけているのは、安易に「戦うぞ!」を使わない、というシンプルな約束ごとです。
コマンドバトルでもラインディフェンスでも、シナリオパートのあとには必ず敵勢力との戦いが展開されます。
バトル直前で「戦うぞ!」を使用してしまうと、ポチゲー時代の「次へ進もう!」からなんら進化が見られません。次にすべきことを明示してはいますが、そんなことはユーザーにとっては百も承知な話です。
例えば一昔前のコンシュマーRPGを思い出してみてください。中ボス戦やラスボス戦の前後など、重要なバトルの前後には敵キャラクターとの会話が用意されています。これが現代のスマートフォンゲームの「シナリオ」に当たる部分です。
過去に大ブレイクしたRPGでは、敵勢力の中ボスが主人公への恨みから執拗に襲いかかってきたり、誰も傷つけたくないのに目的のためにどうしても戦わなければならない主人公の不条理があったりと、さまざまな状況があった上でバトルシーンが展開され、ハラハラドキドキと登場人物に感情移入しながらプレイすることができました。
やはり、どのようなバトル展開でも、主人公側から積極的に「戦うぞ!」とは言いませんでした。
理由なく戦闘に興じるようでは人間味のないただの鬼畜になってしまいますし、なによりワンパターンの展開にユーザーの心が離れてしまいます。
もちろん、スマートフォンゲームにおけるプレイ時間の制約という側面から、冗長なシナリオは受け入れられない現実も考慮しなければなりません。しかし、なるべく「戦うぞ!」には陥らないよう、シナリオの序盤から構成を筋道立てて考えておく必要があります。
「戦うぞ!」を多用せずにストーリーを展開する方法
では具体的に「戦うぞ」を多用せずに物語を進めるにはどうしたらよいのでしょうか?
まずはすぐに実践可能な2つの解決方法をご紹介します。
急襲されるシチュエーションを作る
どのような展開になっても最終的にはバトルに突入するのですが、こちらから仕掛けると「戦うぞ!」の局面になりがちなので、敵から急襲されるパターンを要所要所に取り入れてみましょう。
例えばファンタジーモノであれば…
戦士:「結構洞窟の奥まで進んだけど敵の気配がしないな」
神官:「そうね、さっきから妙に静か…」
盗賊:「良くないことの前触れだったり…なんてな!」
神官:「!?…き、急に…なんなの?このおぞましい気配!」
戦士:「…………!!!!くるぞっ!」
王道の台詞回しですが、バトルシーンには欠かせない展開といえます。
戦う理由を明示する
ソーシャルゲームのバトルはユーザーのプレイ回数が天井知らずに増えるので、なぜ自分がここで戦っているのか?この敵を倒さなければいけない理由はなんなのか?という疑問に対する答えを局面ごとに提示しないと、どうしても作業感が全面に出てきてしまい、引いてはこの作業感がユーザーの離脱にも繋がってしまいます。
ユーザーがリテンションするように差し向けるのですから、戦闘にはそれなりの理由がなければ納得できません。例えば「道を塞がれた!先へ進むにはこいつらを倒すしかない!」という理由があったとします。ここで注意しなければならないのは、この敵を倒すしか選択肢がない状況なのか?ということです。
道を塞がれるというアクシデントがなければ、ユーザーは無理して目の前の敵を倒しにいかなくてもいいのでは?と主人公の行動に疑問を感じてしまいます。
目の前のルート以外で行くと時間がかかって何かに間に合わなくなるとか、崖が崩れて引き下がることができないとか、戦闘を避けられない明確な理由を戦闘前に提示しておくと、ユーザーが違和感を感じることなくバトルシーンに没入できます。
キャラクター設定とプロットをしっかりと
ここまではバトル突入時のシチュエーション設定について述べましたが、最も大切なことは初めからキャラクター設定とプロットをしっかりと作り込むことです。
シチュエーション設定だけでは展開の数に限りが出てしまいます。
キャラクター設定で更なるドラマ性を
キャラクターの過去や人物相関図を作り込むことで、キャラクター同士の関係性が深まり、愛情・嫉妬・憎悪などの人間の特別な感情にリアリティが生まれます。
また、勢力同士の関係性を描くことで、「負傷した味方を救出しなければならない」、「祖国を戦火から守らなければならない」といった攻防も容易に展開することができます。
キャラクター設定は、バトル展開にドラマ性と奥行きを持たせるために欠かせない作業と言え、バトル展開のバリエーションを増やすためにも不可欠な工程です。
作り込んだプロットで幅広い展開を
プロットをしっかりと練っておけば、敵に襲われる場面と自ら戦いを仕掛ける場面、両方のバランスを取った上で、ユーザーに飽きを感じさせず物語を構築することができるでしょう。
プロットを制作する上で参考になるのは少年誌におけるバトル漫画です。
次から次へと現れる強敵、予期せぬ波乱の展開に胸が高鳴る感動は大人になっても変わらないものです。初心にかえり、子どもの頃に読んだ名作からインスピレーションを受けることで、新たなアイデアが思い浮かぶかもしれません。
まとめ
スマートフォンゲームではインゲームが常に決まったゲーム性になってしまい、ただでさえマンネリ化しやすい性質があります。
アウトゲームからインゲームへの橋渡しを担うシナリオにおいては、マンネリ感を感じさせないバラエティに富んだストーリー展開を心掛けることが必要です。
第一にキャラクター設定とプロットの作り込み。続いてバトル前のシチュエーション。
ワンパターンを脱して魅力的なバトル展開を制作するための工夫を常に忘れずにシナリオを制作したいと思います。