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モバイルのF2Pゲームにおけるシナリオの変遷~ガラケーからスマホへ

モバイルのF2Pゲームにおけるシナリオの変遷

モバイルゲームの主戦場がガラケーからスマホへと移り変わり、携帯電話のFree to Playゲームは僅か数年で急速な進化を遂げました。
端末の性能向上に伴ってゲームはより深みを増し、シナリオやグラフィックもコンシューマゲームに引けを取らないレベルにまで成長しています。

今回は、現在のオンラインゲームの主流である、基本プレイ無料ゲームのシナリオの変化にフィーチャーします。

ガラケー時代は「あってないようなもの」だったシナリオ

ガラケーのソーシャルゲーム全盛期からしばらくの間、F2Pゲームにおけるシナリオは無きに等しいものでした。

ボリュームのあるシナリオを展開するには、ユーザーに何度も画面をタップしてもらわなければなりませんでした。単調な作業の繰り返しはユーザーの離脱に繋がります。そのため、シナリオは数回の遷移で終わらせることが大前提となっていました。

当然、少ない画面数で表現できるシナリオ展開は限られており、映画のようなストーリーラインでゲームシナリオを構築することはできません。

非ゲーム産業からの参入とコンシューマゲームとの違い

当時のF2Pゲームの主力デベロッパーは、広告代理店やWeb制作会社などの非ゲーム産業からの参入が多かったこともあり、お世辞にも物語性が豊かなコンテンツとは言い難いタイトルが割拠していました。

非ゲーム産業からの参入

また、コンシューマゲームでは、「いかにリッチなCG表現で独創的な世界を創り上げるか」、「映画のようなストーリーラインでどれだけのユーザーを引き込めるか」が焦点となっていたのに対し、ソーシャルゲームでは、「いかにユーザーの離脱を防ぎ、CVRを上げKPIを目標に近づけるか?」というオンラインゲームやWebの考え方が取り込まれたことも両者の違いを決定づける要因となりました。

このような背景の中、F2Pゲームに実装されるシナリオは近視眼的な展開に終止することが多くなり、連続性のある壮大な物語とは程遠いものになっていきます。

ユーザーの住み分け

長らくコンシューマゲームに慣れ親しんだユーザーにとって、多くのソーシャルゲームは面白みを感じられるものではありませんでした。

ソーシャルゲームのパブリッシャーも旧来からのユーザーの声は把握していたはずですが、それでもゲーム性を変えることは選択しませんでした。ソーシャルゲームのユーザーは、旧来からのゲームユーザー層とは異なるライト層が中心だったからです。

ユーザーの住み分け

そのため、パブリッシャーは声の大きいマイノリティではなく、サイレントマジョリティの声を聴くようになります。ソーシャルゲームにおけるシナリオは「あってないようなもの」として、スキップされるのが当然という扱いが長く続きました。

シナリオの重要性の復古とKPIの関連性

ガラケー時代は存在感のなかったF2Pゲームのシナリオですが、スマートフォンの登場によって大きな変化が訪れます。数タップで終わる「とりあえず」のシナリオはあえなく終焉を迎えることになりました。

主力パブリッシャーの交代

スマートフォンの登場と時を同じくして、ガラケー時代の主力パブリッシャーであった非ゲーム会社のコンテンツよりも、コンシューマのパブリッシャーである老舗ゲーム会社のコンテンツの方が売れ行きがよくなるという現象が起こります。

スマホに戦場が移ったことで今まで不可能だったリッチな表現が可能になり、もともと3Dなどの高度な技術を持っていたパブリッシャーが有利になってきたのです。

視覚的な表現の幅が広がるとともにゲームに実装できるデータ容量も格段にアップしました。
シナリオについても同様、壮大なスケールを謳う本格シナリオのF2Pゲームが目立ち始めてきました。

人気ゲームタイトルのモバイルゲーム化

主力パブリッシャーが交代すると、コンシューマやPCで展開している人気タイトルがスマホゲーム化されるようになります。

人気タイトルのスマホゲーム化

そういったタイトルは、老舗のパブリッシャーとソーシャルゲーム作りに長けた新興開発会社のタッグで作られることが多く、モバイルゲームにも徐々にコンシューマゲームのシナリオスタイルが反映されるようになっていきました。
今まで存在感のなかったシナリオは、しっかりとプロットが練られた連続性のあるシナリオへと変化していったのです。

変化するKPI要素

KPIを引っ張る要素が変化したことも、シナリオが重要視されるようになった要因のひとつとして挙げられるでしょう。

ユーザーを惹き付けた特効カード

ガラケー時代から暫くの間、ソーシャルゲームでは特効カードが主力の商材として扱われてきました。特効カードとはゲーム内イベントの期間中だけ戦力が何倍にもアップするカードのことを言います。このカードを得るために、ユーザーは何十回、何百回とガチャを回しました。

ユーザーを惹き付けた特効カード

なぜ特効カードはユーザーを惹き付けたのか。
それはソーシャルゲームの性質に深く関係しています。人と競い合うのはソーシャルゲームの醍醐味です。イベントランキングで上位に入ることができれば、豪華な限定アイテムが手に入るだけでなく、自分のIDが掲示されるという名誉も付いてきます。

多くのユーザーはキャラクター自体の魅力に惹かれてガチャを回していたのではなく、ランキング目的で課金を行っていました。

キャラクターの魅力でKPIを牽引

スマホがメイン端末になるにつれ、カードのみで進行するソーシャルゲームは少なくなりました。端末の性能向上に伴ってゲーム内での演出の幅が広がり、静止画だけでなく3Dモデル搭載のゲームが目立ち始めました。必然的にキャラクター1体(カード1枚)あたりの製造コストは高騰していきます。

同時に、特効カードの売上(=特効カードを主力商品にしたイベントの売上)にも陰りが見え始めました。

そうなると従来の運営方法では売上を維持することができません。
訴求力を上げるには、パラメーターやレア度の高さだけでなくキャラクター自体の魅力を強化する必要があります。そのキャラクターの魅力を補完する要素のひとつとしてシナリオが重要視されるようになってきたのです。

キャラクターごとに独自のエピソードを持たせ課金のフックにする手法は、スマホ時代のゲームにおいてのセオリーと言えるでしょう。

有名ライターの参入によるシナリオクオリティの向上

シナリオの重要性が高まったとはいえ、ただやみくもに文章量を増やせばいいというわけではありません。読むのが負担になるようなクオリティでは逆効果ですし、ユーザーにもっと続きを読みたいと思わせるストーリーでなければシナリオを追加する意味がありません。

そこで白羽の矢が立ったのがプロの有名ライターです。

プロの有名ライター

とあるスマホゲームでは有名ラノベの原作者がメインライターを務めました。また、大人気ゲームシリーズから派生したスマホゲームでは、原作のライターがシナリオを書き下ろして話題を呼びました。

コンシューマゲームもハードが世代交代するたびに実装容量を増やし、シナリオのクオリティはどんどん上がっていきました。同じ流れがスマホゲーム市場でも起こっていると言えます。

異なるシナリオのタイプ

ただ、スマートフォンゲームとコンシューマゲームとでは、適するシナリオのタイプが異なります。

コンシューマゲームのシナリオの特徴

テレビの前にどっしりと腰を落ち着かせてプレイするコンシューマゲームでは、重厚でボリュームのあるシナリオが好まれます。

コンシューマゲームのシナリオを他のメディアで例えるならば映画が近いでしょうか。
1本の長く壮大なお話をサイドストーリーを交えながら展開します。

スマホゲームのシナリオの特徴

一方、スマホゲームはプレイスタイルが大きく異なります。
学業や仕事の休憩時間、通勤途中や待ち合わせの間など、少しの時間でも気軽にプレイできるのがスマホゲームの特徴です。ワンプレイ5分がスマホゲームの標準と言われています。このタイプのゲームは細かく区切れるシナリオが適しています。

スマホゲームの短いプレイ時間

スマホゲームのシナリオは週刊連載のマンガや連続ドラマに似ています。
物語に連続性と継続性を持たせつつ、短いスパンで盛り上がりを作って次のシナリオへ続けるという特色があります。

ターゲットユーザーの性質

スマホゲームとコンシューマゲーム、両者のターゲットユーザーの性質を正しく理解していないとユーザーを惹きつける物語を展開することはできません。シナリオにはゲームのプレイスタイルにマッチしたテンポが求められています。

おわりに

ガラケーからスマホへと移り変わったことで変化したF2Pゲームのシナリオについて振り返ってきましたが、この推移がたった4、5年の間の出来事ということに驚かされます。
移り変わりの早いモバイルゲーム市場ですが、ユーザーの需要と動向を細かくリサーチした上でのシナリオ制作が必要だと強く感じました。

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