ソシャゲイラストの仕事ってどうやるの?
仕事の流れを解説します![前編]
「趣味のイラストを仕事にしてみたい!」と考えている方や、「イラストの依頼が来たんだけど、どんな風に仕事を進めたらいいの?」という方向けに、イラスト制作の仕事の流れを具体的にお話したいと思います。
今回は、ここ数年成長の著しいソーシャルゲームのキャラクターイラストをサンプルに、制作過程で注意すべきポイントやコツなども併せてお伝えできればと思っていますので、ぜひ参考になさってみてください。
「仕事の決定」から「仕様書の確認」までを前編、「ラフ制作」から「納品」までを後編として2回に分けてご紹介します。
後編のソシャゲイラストの仕事ってどうやるの?仕事の流れを解説します![後編]も参考になさってみてください。
仕事はどうやって決まるのか?
一言でソーシャルゲームのキャラクターと言っても、ゲームのジャンルや世界観、ストーリーやコンセプトによって、求められるキャラクターのテイストは大きく異なります。
例えば、扇風機やスマホが擬人化し、美少女になって登場するゲームがあるとします。
このゲームのキャラクターイラストに求められる特徴は下記の通りです。
- 塗り方
- アニメ塗りとブラシ塗りのハイブリッド
- 構図
- キャラクターの性格が透けてみえるような個性豊かなポーズ
- 表情
- アニメキャラクターのように豊富な表情バリエーション
- 服装
- 元のアイテムをデフォルメさせた独創的な創作衣装
イラスト制作会社はこれらの特徴に合致したイラストが描けるクリエイターを、pixivなどのイラスト投稿SNSサイトや、コミックマーケットに代表される同人誌即売会などで探すことになります。
仕事の内容は、ひとりですべての工程(ラフ、線画、着彩)をお願いする場合もありますし、ラフのみ、線画のみ、着彩のみ、と各工程を切り離して依頼する場合もあります。
納期や原稿料などの諸条件を制作会社からイラストレーターに提示をし、対応可否の返信をしていただいてから(必要な場合は秘密保持契約、業務委託契約などを締結)正式に制作がスタートします。
制作開始から納品までの全体の流れ
制作過程には大きく分けて3つのフェーズがあります。
- ラフ制作
- 線画制作
- 着彩制作
各工程ごとに監修が入り、そこでOKとなれば次のフェーズに進んでいただくことになります。
フェーズごとに監修がある理由として、もし最終工程まで進んだ際に「右の腕をもっと下げてほしい」などの要望があった場合、右腕部分の線画と塗りを一から描きなおす修正作業は非常に手間も時間もかかってしまうためです。
ラフ段階でポージングや衣装、表情の方向性をFIXさせておけば、最終段階で大きく構図を変えなくてはいけないという事態にはなりません。
また、着彩段階の監修では光源や色合いの変更、影をもっと強くするなど、各工程に沿った修正依頼が入ります。
着彩監修が終わった後は、最後の仕上げや微調整をしていただき、最終チェックを経て晴れて納品!というのがソーシャルゲームイラストの一般的な制作フローです。
ラフ制作の前に確認すべき4つのこと
制作に入る前に、よく確認しておくべき4つのポイントについて説明します。
1. 制作会社との連絡方法を確認しよう
クリエイターとイラスト制作会社を結ぶコミュニケーションツールは、主にメールやチャットツールです。
制作会社から特に指定がない場合は、メールにてデータやフィードバックのやり取りをします。
対面での打ち合わせや電話でのやり取りは緊急時以外省くことが多いので、メール不達などのエラーは注意して防がなければなりません。インターネット環境は常に万全の態勢にする必要があります。
メールアドレスは現在、GmailやYahoo!メールなどのフリーメールで問題ない場合がほとんどです。(10年前までは契約しているプロバイダのメールアドレスでなくては正式メールとして認められず、フリーメールでは各種サービスを利用できないなんて時代がありました…。)
そのため、プライベートとは分けた仕事用のフリーメールアカウントを取得しておくと、連絡がスムーズに進みます。
また、キャラクターイラストの納品形式にはPSDファイル(Adobe Photoshopで利用する画像ファイル形式)が指定されていることが多いですが、データの容量が多いため、メール添付だけでは対応しきれない場合があります。
一般的にメール添付できる容量の上限は2MBまでと覚えておくと、メールが届かないなどのトラブルは回避できるかと思います。
データ容量が大きい場合は、パスワードを設定したフリーのオンラインストレージやファイル転送サービスなどを利用しましょう。
2. キャラクター指示書を確認しよう
キャラクター指示書には、実際に制作するキャラクターのプロフィールがこと細かに書かれています。
キャラクターの名前、年齢、特徴や口ぐせ、どのような髪型なのか、体型は?ポーズは?服装は?…などなど、キャラクターの特徴やイメージをつかんでいただく資料です。
キャラクター指示書には前述のような文章での説明に加え、参考画像を使用しての説明も多くなります。参考画像はあくまでもイメージですので、それをそのままデザイン流用したり、トレースするのは著作権上NGです。
キャラクター指示書をくまなく確認した上で、内容に不明点や疑問点があった場合は、その都度制作会社に確認してみましょう。なかには矛盾している内容が書かれていたり、説明不足な部分があるかもしれません。
「ここおかしくない?」と思ったら担当者に確認をし、トラブルを未然に防ぐことが重要です。(ここでおざなりな対応をされたり、イヤな印象を受ける会社は危険かもしれません。)
3. フォーマットを確認しよう
キャラクター指示書と一緒に、フォーマットPSDファイルが用意されている場合があります。
フォーマットPSDファイルはそのまま制作に使用する作業用のPSDファイルです。ソーシャルゲームのイラスト制作ではPSDファイルを納品形式としているケースが多いです。
画像サイズや解像度、カラーモードがあらかじめ設定され、レイヤー分けフォルダ分けされたPSDファイルになっています。
しかし、PSDファイルを使用するからといって、必ずしもPhotoshopが必要になる訳ではありません。多くのペイントソフトでは拡張子.psdのファイル形式で保存ができる仕様になっています。
ただ、注意すべき点として、ペイントソフトとPhotoshopとで互換性のない機能がある場合、双方で色合いなどが同じように再現できないケースがあります。
例えば、ペイントソフトのSAIでは「発光」という合成モードがありますが、Photoshopでは同じ描画モードが存在しないため、Photoshopで開くと意図しないSAIとは異なる色合いになってしまいます。
お使いのペイントソフトの仕様をチェックし、Photoshopで正しく再現できる表現方法で制作するのが望ましいです。
また、ソーシャルゲームイラストでは「差分」と呼ばれる仕様が存在します。
例えば服装差分の場合、同じキャラクターの素体を元に、服装だけを替えて差分を制作します。表情差分も同じように、同じ素体、構図のキャラクターで表情部分のみを笑顔や泣き顔など表情バリエーションを持たせます。
多くの場合、この差分に対してレイヤーとフォルダ構成が指定されています。
4. 説明資料を確認しよう
キャラクター指示書がキャラクターについての特徴が書かれた資料なのに対して、ここでの説明資料とは、ゲーム全体のコンセプトや世界観、イラストの塗り方や方向性、PSDファイルのレイヤー構成などの仕様について書かれている資料です。
多くのソーシャルゲーム(主にカードゲーム)では、異なる作家が描くキャラクターが多数登場します。どんなに魅力溢れるイラストでも、他のキャラクターとあまりに異なるテイストではゲーム全体がちぐはぐな印象となってしまいます。
それらを解消するために、塗り方や方向性のレギュレーション(決まり事)を設けています。
こちらもキャラクター指示書と同様、疑問点があればラフ制作前に確認を取るようにしましょう。曖昧にしたまま制作に入ると、あとから余計な修正が増えてしまう恐れがあります。
おわりに
今回は制作に入る前の準備についてお話しました。
次回のソシャゲイラストの仕事ってどうやるの?仕事の流れを解説します![後編]では「ラフ制作」から「納品」までの、実際の制作フローを詳しくお話したいと思います。