ソシャゲイラストの仕事ってどうやるの?
仕事の流れを解説します![後編]
ソーシャルゲームのキャラクターイラストをサンプルにしたイラスト制作の仕事の流れ、後編となる今回は、「ラフ制作」から「納品」までの、実際の制作フローを詳しくお話したいと思います。
これからイラストの仕事をスタートしたいと思っている方や、仕事の進め方が分からなくて不安だ…という方に、制作のポイントやコツも併せてお伝えできればと思っていますので、前編のソシャゲイラストの仕事ってどうやるの?仕事の流れを解説します![前編]とともに、ぜひ参考になさってみてください。
ラフの制作
人体を立体的に、体の構造を意識しながら大まかな構図を決めるアタリ。
アタリに肉付けをしていき、主線を導くラフスケッチ。
どちらも描き方や制作の進め方は人それぞれです。「ラフ」で画像検索してみると、ほぼアタリのみで構成されたラフや、線を太めにほぼ一筆で描かれたラフ、線を多く重ねたラフ、線画レベルまでキレイに主線を整えているラフもあり、どこまでをラフとして描き込むかは十人十色です。
完成がイメージできるラフ
ソーシャルゲームのイラスト制作の場合、「ラフの段階でこのレベルまで線をまとめてほしい」という明確なガイドラインは設けていない場合が多いのですが、顔と服装、ポーズが判断できるレベルまである程度線をまとめておくと、受け手としては完成のイメージがしやすいです。
また、ラフの段階でざっくりと配色を置いておくと、キャラクターや衣装デザインのイメージをより詳細に捉えることができ、監修者も的確なフィードバックを返すことができます。
ゲームでの表示範囲を意識しよう
納品形式としてPSDファイルなどのフォーマットが用意されている場合には、ラフの制作段階からできる限りフォーマットを使用することが望まれます。
多くの場合、フォーマットには「ゲームで表示される際の表示範囲」が入っています。
キャラクターは頭から足の先までの全身を描くけれど、ゲーム内でメインとなる表示の際は、キャラクターの腰あたりまでをトリミングした状態で表示される、といった場合に表示範囲が設定されているのです。
カードゲームであれば、カード枠を当て込んだ状態を確認できますので、実際にゲームで表示される構図そのままにチェックができます。
フォーマットを確認せずにラフを描き始めてしまうと、「ラフだけ見ると素晴らしい構図だけど、後からカード枠に当て込んでみたら手に持った武器が隠れてしまった」というイラストの重要箇所が表示されないなどの勿体ないミスが起こってしまいます。
最後にラフの制作期間についてですが、これは正直なところ仕事によってさまざまです。
次は少しだけ脱線して、各工程のスケジューリングについて説明します。
イラストの工程ごとの締切
イラストの制作工程の締切日(提出期限日)については、その仕事によって、「ラフは◯日、線画は○日提出」と明確に日付を指定している場合もありますし、「最終納品日だけを決めて各工程の締切日はお任せ」という場合、どちらのケースも存在します。
両方の場合に共通して重要なのは、フィードバックにはどのくらいの日数、時間がかかるのか、という点です。
これはイラスト制作会社の担当者が制作前にはっきりと明示すべきところですが、特に言及がなかった場合はフィードバックに要する時間も確認しておくと制作がスムーズに進みます。
「納品日までに提出したけれど、なかなかレスポンスがなくてヤキモキする」、「フィードバックが遅れたがために後の工程の締切が押してしまった」などの問題を防ぐことができます。
フィードバックが予定よりも遅延したという理由だけで後の締切に支障が出そうな場合は、早めに締切日を再調整してもらうことも大切です。
余裕をもったスケジュールを
「最終納品日だけを決めて各工程の締切はお任せ」というケースでは、自身の制作スピードをしっかりと把握した上で、無理のないスケジュールを提示することが肝要です。
人によってイラストの各工程にかかる時間はさまざまです。
例えば、「ラフには時間をかけたいけど線画と着彩にはそれぞれ2日もかからない」といったイラストレーターの方の場合、制作期間が1ヶ月の仕事だとしたら、
- ラフ
- 18日(時間を掛けて構図や衣装デザインを煮詰めていこう)
- 線画
- 4日(線画は修正も含めて4日間で完成できるな)
- 着彩
- 4日(ラフで配色さえ決まっていれば着彩も4日くらいかな?)
- 最終稿
- 4日(最終調整にも多めに時間を取ろう)
といったように、各工程を単純按分せずに、掛けたい時間や調整の依頼が入ることも踏まえて、余裕をもったスケジューリングができると完璧です。
もちろん、プライベートの予定も考慮しつつ、くれぐれも無理は禁物です。
納期に遅れそう!そんな時は
どんなに余裕をもたせたスケジュールを立てても、予期しないアクシデントでやむを得ず納期に間に合わないこともあるかと思います。
そんなときはすぐに担当者に連絡しましょう!
事前に間に合わないことが伝わっていれば、解消する手段はたくさんあります。
しかし、納期ギリギリでの連絡や、納期を過ぎてからの連絡では解消する手段が減るばかりか、仕事を請ける個人としての信用も大きく揺らいでしまいます。
大切なのは常に早めの連絡を心がけることです。
それでは続いて「線画の制作」の説明、ラフ工程の続きに戻ります。
線画の制作
ラフの監修でOKとなれば、次の工程は線画の制作です。
ソーシャルゲームのイラスト制作における線画工程では、納品フォーマットのフォルダ構成に合わせて、各パーツをレイヤーごとに分けるという作業があります。
フォーマットに沿ったフォルダ構成
ラフ工程ではフォルダ構成は意識せず、ひとつのレイヤーだけでOKな場合がほとんどですが、線画工程からはフォーマットに沿ったフォルダ、レイヤー構成にする必要があります。
監修はイラストだけではなく、フォルダ構成にもチェックが入ります。
「差分」がある場合
ソーシャルゲームイラストでは「差分」と呼ばれる仕様があります。
例えば服装差分の場合は、同じキャラクターの素体を元に、服装部分だけを替えてバリエーションを増やします、着せかえ人形のようなイメージです。
表情差分も同じように、同じ素体、構図のキャラクターに表情部分のみ笑顔や泣き顔などを加えます。
差分についても、フォルダの表示ON/OFFで服装や表情を切り替えられるようにまとめていきます。
レイヤーがフォーマット通りにフォルダに正しくセットされていないと、ゲームでの表現に支障をきたすため、構成も確認しながら制作を進めていくようにします。
着彩の制作
いよいよ完成に近づく着彩工程です。
ラフや線画の工程にてある程度決めておいた色を、レイヤーとフォルダ構成も調整しながら塗っていきます。
イラストについての説明資料が用意されている場合は、塗り方(アニメ塗りやブラシ塗りかなど)についても確認をしながらレギュレーション(決まり事)に沿って進めていきましょう。
着彩工程で注意したいポイント3つ
着彩工程で注意すべきポイントは3つあります。
塗り漏れに注意
着彩工程でもっとも発生しがちなミスは塗り漏れです。
作品を拡大してチェックしてみると、小さなアクセサリなどのパーツを塗り忘れていたり、線のキワに少しだけ塗り漏れがあったり、といったケースが多く見受けられます。
提出の前に塗り漏れがないかの最終チェックが必要です。
光源を意識しよう
着彩時の光源は、説明資料などで指定されている場合がほとんどです。
例えば「光源はキャラクターの頭上左上」や、背景込みのイラストであれば「窓から光が差し込んでいるように」などと、状況に応じて光源の指示が説明資料に記載されています。
髪の毛や衣装の光の反射、落ち影の処理は、光源を意識しながら制作を進めてください。
レイヤー未統合のファイルは残しておこう
納品時にレイヤーをフォーマット通りに統合した場合でも、レイヤー未統合のファイルはお手元に残しておいていただけると大変助かります。
ゲームに組み込んだ際に見栄えを再度調整するため、レイヤー未統合のファイルが必要になる場合があります。
そもそも納品フォーマットでは、「レイヤーをできるだけ統合しないでください」と指示されていることが多いです。
調整に必要なだけでなく、ゲーム内でキャラクターを動かしたりする場合は細かなファイル構成が要求されます。レギュレーションを無視してレイヤーが統合されていると正常に実装できません。
せっかくの素晴らしい作品を美しく適切に再現するために、レイヤー未統合のファイルが必要です。
おわりに
前編、後編と2回に分けて、ソーシャルゲームキャラクターのイラスト制作の仕事の流れを紹介して参りましたが、いかがでしたでしょうか?
商用イラスト制作の仕事は、制作の進め方に指示が入ったり修正を要したり…と趣味のイラストとは違ってイレギュラーな作業も発生しますが、自分の描いたキャラクターをたくさんの人に知ってもらえる、とてもやりがいのある仕事です。
もしもいま「イラストの仕事をしてみたいけど…」とお悩みの方は、勇気を出してイラスト制作会社にメールを送ってみてください。多くの制作会社は商用イラスト未経験の方でも歓迎しています。(できればツジヒールにもメールを送っていただけると…とても嬉しいです!)